碧巌の歩記(あるき)NO46 雨降る夜は囲炉裏のそばで・・

雨降る夜はイロリの傍で手足をグッツと伸ばす・・この気持ち良さ(大愚良寛

碧巌録 第四十六則 鏡清 雨滴声(きょうせい うてきせい)

【垂示】圓悟が、坐下の求道者に垂示する。

禅者は、版木の一打ち「カン」となれば、坐禅するのか、飯を食うのか・・凡聖を問わず 禅境丸出しの行跡を示す。

剣の上を歩くとか、酒の巷で色恋沙汰も何のその、寂寥の境地を独歩するような、そんな自在な禅者は、それとして・・お前さんは、版木が「カーンカーンカーン」と鳴ったら、どうするかナ。

人里離れたオンボロ禅庵のアマダレ問答、試みに看よ。

    【垂示】垂示に云く、一槌(いっつい)に便成(べんじょう)すれば

     凡を超え 聖(しょう)を超えん。

     片言に可折(かせつ)すれば、縛(ばく)を去り 粘(ねん)を解(と)かん。

     氷凌上(ひょうりょうじょう)を行き、釼刃上(けんにんじょう)を走り、

     聲色堆裏(せいしょくたいり)に坐し、聲色頭上に行くがごとき、

     縦横なる妙用は すなわち しばらくおく。

     刹那(せつな)便去(べんきょ)の時 いかん。

     試みに挙す 看よ。

【本則】ある雨降りの夜更け、鏡清道怤(きょうせい どうふ)が、窓の方を見て求道者に問うた「アリャ・・ナンダ?」

求道者「はい・・あれは、パラパラと降っている雨音です」

鏡清「オイオイ・・お前さんは、まるでスマホ奴隷の哀れさ丸出しダネ」

自分が非難されたと思った求道者、反問した。

「老師ヨ、貴方様は・・己に迷わず、執着もない悟境(地)の方ですが、それでは、あれは何の音でしょうか」

鏡清「ホトンド迷わん事に近いガナ・・」

求道者「どういう意味ですか?ハッキリ言ってください」

鏡清「どの毛虫が蝶になり、どいつが蛾になるか、云わぬが花というもんだ」(その出どこは解かるが 云うのは難しい・・の意)

   【本則】挙す。鏡清、僧に問う「門外は これ何の声ぞ・・」

    僧云く「雨滴声(うてきせい)」なり。

    清云く「衆生は顛倒(てんどう)して、己に迷い 物を逐(お)う」

    僧云く「和尚 そもさん」

    清云く「ほとんど己に迷わず」

    僧云く「ほとんど己に迷わずとの意旨(いし)いかん」

    清云く「出身はなお やゝやすきも、脱體(だったい)に 道いこたうること難し」

【頌】萎(しな)びた禅院での、夜もすがらのアマダレ問答。何時までも雨音に拘(こだわ)っているようでは、遠く南山にも、北山にも大地を川にして降る雨を、どうすることも出来ないだろう。

この求道者、キット、雨に濡れて焼死(!?)するまで(永遠に)このシトシト・・ザアザアは解かるまい。

   【頌】虚堂(きょどう)の雨滴声には、作者も酬対(しゅうたい)しがたし。

      もし かって流をかえすといわば 依然(いぜん)として また不會。

      會(え)か 不會(ふえ)か。南山北山 うたた霶霈(ほうはい)

 

【附記】越州浙江省)鏡清(きょうせい寺の)道怤(どうふ 868~937 雪峰義存の弟子)弟子には雲門文偃、長慶慧稜、保福従展など著名な兄弟弟子がいる。

*この禅問答・・私は妙に好きである。

雨音のリズムが独り、寂寥を誘うのだろう。

パッカン(釣り道具を入れるバケツ)に、手書きしている「夜雨草庵」大愚良寛漢詩をここに添わせておきます。

生涯懶立身    わがいのち 身を立てるにうとく

謄々住天真    なすべきままに・・あるがまま

嚢中三升米    袋には三升の玄米と

炉邊一束薪    ろばたに一束 たきぎがパチパチ

誰問迷悟跡    迷いも悟りも忘れ果て

何知名利塵    欲得ナンゾどこへやら

夜雨草庵裏    シトシト夜雨の この破れ庵

双脚等間伸    手足を「グッツ」と・・この気持ち良さ